調達の課題と改善機会を特定するための7つの指標

企業の調達部門は、事業活動に必要な原材料、設備、サービスなどを購入する役割を担っています。その成果を測るために、一般的には「どれだけコストを削減できたか」「発注した商品が予定どおりに納入されたか」といった指標が使用されています。
こうした基本的な指標は重要ですが、調達活動の一部しか捉えていません。実際には、多くの企業がまだ十分に把握できていない指標があり、そこから、より大きな課題やコスト削減機会が明らかになることがあります。ここでは、見落とされがちな7つの調達指標を紹介します。
1. サプライヤーの背後にある取引関係を把握できているか
直接取引しているサプライヤーは把握していても、そのサプライヤーがどこから調達しているかまで把握できているでしょうか。
例えば、あるパン屋が小麦粉を仕入れている業者が、その原料となる小麦を一つの農場だけから調達しているとします。その農場で問題が発生すれば、パン屋は直接取引していない農場の影響を受け、小麦粉を調達できなくなる可能性があります。
多くの企業は、こうしたサプライチェーンの上流まで十分に把握できておらず、実際に供給の問題が発生して初めて、依存関係に気づくことがあります。
評価指標:直接取引するサプライヤーより上流の取引関係を、どの程度可視化できているか
サプライヤーネットワークの多層的な構造を把握することで、供給途絶につながる前に、隠れた依存関係やリスクを特定できます。
2. 環境負荷を含めた真の調達コストはいくらか
製品による環境汚染に対して、企業に費用負担を求める規制が広がりつつあります。しかし、多くの企業では、サプライヤーが環境に配慮しているかどうかを確認するだけで、実際の調達判断には十分に反映できていません。
より効果的なのは、サプライヤーを選定する際に、購入価格だけでなく、環境負荷に伴うコストも考慮することです。例えば、購入価格が安いサプライヤーでも、環境負荷が大きい場合には、関連する費用を含めた総コストが、ほかのサプライヤーより高くなる可能性があります。
評価指標:環境負荷を考慮した場合、サプライヤーの実質的な調達コストはいくらか
こうした評価によって、サステイナビリティへの対応を単なるコンプライアンス上の取り組みではなく、実際の調達先選定に影響する判断基準として活用できます。
3. サプライヤーのリスクをどれだけ早く察知できているか
サプライヤーが倒産したという事実を把握することは難しくありません。しかし、重要なのは、その兆候をどれだけ早く察知できていたかという点です。
数か月前にリスクを特定できれば、代替サプライヤーの確保など、事前の対策を講じることができます。一方、納品予定日に商品が届かず、初めて問題に気づいた場合には、対応の選択肢が限られてしまいます。それにもかかわらず、実際にどの程度の事前警告期間を確保できているかを測定している企業は、まだ多くありません。
評価指標:サプライヤーリスクを特定してから、実際に供給の混乱が発生するまでに、どれだけの期間があるか
リスクを早期に把握できるほど、調達部門はより多くの対応策を検討・実行できるようになります。
4. コスト削減効果はどれだけ維持されているか
調達部門が契約交渉によって大幅なコスト削減効果を見込めると報告しても、その効果が実際に得られ、継続するとは限りません。例えば、契約で定めた条件以外での購買が発生したり、当初想定した数量が購入されなかったり、価格が徐々に引き上げられたりすることで、1年後には当初見込んでいた削減効果の一部しか実現していない場合があります。
本当に評価すべきなのは、交渉時に算出した削減額ではなく、実際にどれだけの削減効果が得られ、それが維持されているかという点です。しかし、この違いを継続的に確認している企業は限られています。
評価指標:当初報告したコスト削減額のうち、実際に実現し、継続して維持できている割合はどの程度か
コスト削減の成果は、契約締結時点だけで評価するのではなく、実際の事業成果として反映されるまで追跡することが重要です。
5. 調達業務の自動化はどこまで進んでいるか
現在では、調達業務に伴う多くの書類処理を、ソフトウェアやAIによって自動化できるようになっています。ただし、注目すべきなのは、どれだけ多くの帳票や申請書を自動処理できているかという数字だけではありません。
調達業務全体のうち、どの程度の作業を最小限の人的対応で進められるようになり、その結果、調達担当者がより戦略的で付加価値の高い意思決定に時間を使えるようになったかが重要です。
評価指標:調達業務のうち、人手による対応を最小限に抑えて実行できる割合はどの程度か
自動化の目的は、単に書類処理を効率化することではありません。調達担当者が、より大きな価値を生み出す業務に注力できる環境を整えることにあります。
6. サプライヤーから生まれるイノベーションの価値はどれくらいか
サプライヤーは、コスト削減や製品改善について、発注企業以上に有効なアイデアを持っている場合があります。そこで重要になるのが、実際の業務改善や製品改善のうち、どれだけがサプライヤーからの提案によって生まれたものなのかという視点です。
しかし、多くの企業では、サプライヤーから生まれた改善効果を十分に測定していません。その結果、大きな貢献をしているサプライヤーを適切に評価できていない可能性があります。
評価指標:サプライヤー主導のイノベーションによって、どれだけの測定可能な価値が生み出されているか
サプライヤーからの提案とその成果を追跡することで、契約上の取引条件だけでは測れない、取引関係の価値を明らかにできます。
7. 調達部門は取引先や社内関係者と良好な関係を築けているか
この指標は多くの企業で見落とされていますが、最も重要なものの一つかもしれません。調達業務で重要なのは、価格だけではありません。人との関係も大きな影響を与えます。
調達担当者は、サプライヤーや社内の関係部門、経営層など、さまざまな人と日常的にやり取りしています。しかし、経験豊富な管理職を含め、相手への配慮が不足していたり、一方的なコミュニケーションになったり、十分に意見を聞けていなかったりするケースもあります。こうした対応は、表面化しにくいものの、取引関係や社内連携に悪影響を及ぼします。
サプライヤーが積極的な協力を控えるようになったり、社内のほかの部門が調達部門とのやり取りを避けるようになったりする可能性があるためです。この指標を測定する方法はシンプルです。サプライヤーや社内関係者に対して、調達部門の対応がどれだけ丁寧で、明確で、協力しやすいものかを評価してもらいます。
評価指標:サプライヤーや社内関係者から見て、調達部門はどれだけ信頼でき、協力しやすい存在となっているか
こうした評価が高い調達部門は、サプライヤーや社内関係者から、より積極的な協力、有利な取引条件、新たな改善提案を得やすくなります。その理由はシンプルです。人は、自分を尊重し、適切に対応してくれる相手と協力したいと考えるからです。

7つの指標に共通すること
ここまで紹介した7つの指標には、共通点があります。いずれも、これまでは測定が難しい、あるいは重要性が見過ごされやすい指標でした。
しかし現在では、データの充実、新たな規制、ソフトウェアの高度化に加え、価格だけでなく人の行動も調達成果に影響するという認識が広がったことで、こうした指標を測定できる環境が整いつつあります。それでも、実際にこれらの指標を継続的に活用している企業は、まだ限られています。
7つすべてを一度に導入する必要はありません。まずは2〜3の指標に着目するだけでも、これまで見逃していたリスクを早期に発見し、新たな価値創出の機会を特定できる可能性があります。
調達部門にとって重要なのは、測定する指標の数を増やすことではなく、これまで見過ごされてきた指標から、新たな課題や改善機会を見いだすことです。
Get in Touch with Us
Get in touch with us to discuss your strategic needs and how we can help you develop a plan to accelerate your growth
Schedule a Consultation

