ケーススタディ

特定サプライヤーへの依存から調達競争力の強化へ:グローバル農業機械メーカーの調達改革

2026年10月15日•by YCP Supply Chain
Industrials

農業機械製造の世界的リーダーであり、世界トップ5のトラクターブランドの一つを展開する同社は、150か国以上の150万人を超える農業従事者に製品を提供する大規模な製造・輸出ネットワークを有しています。20馬力から120馬力までのトラクターや先進的な農業用作業機など、幅広い製品を展開しており、安定した生産活動と顧客への供給責任を果たすためには、信頼性の高いサプライヤー基盤が不可欠でした。

複数の調達カテゴリーにわたって調達要件が拡大する中、同社は、より幅広く競争力のあるサプライヤーネットワークの構築に課題を抱えていました。特に専門性の高いカテゴリーでは、サプライヤー側の技術的な知見が限られており、経験豊富な少数のサプライヤーへの依存度が高い状況でした。

また、現地サプライヤーを優先する調達方針によって、国際的な価格水準との比較機会が限られ、サプライヤー間の競争も十分に働いていませんでした。さらに、一部のサプライヤーは自社の厳格な社内規定によって電子オークション(e-Auction)に参加できず、標準の支払条件であるNET 60(60日後払い)も、利益率の低いカテゴリーを扱うサプライヤーにとって参加の障壁となっていました。

こうした調達上の制約に加え、頻繁な納品遅延やリードタイムのばらつきなど、物流面での不安定さも受注対応や顧客満足度に影響を及ぼしていました。

これらの課題を受け、同社はYCPに対し、サプライヤーネットワークの拡大や調達カテゴリーの対象範囲の拡充、取引条件・調達プロセスの改善を通じて、コスト削減と供給の安定性向上を両立する、柔軟で競争力の高い調達モデルの構築を依頼しました。

課題

同社の調達環境では、サプライヤーの集中、取引条件上の制約、物流上の課題が重なり、コスト競争力と安定供給の両面に影響を及ぼしていました。

  • サプライヤーネットワークの制約:専門性の高いカテゴリーでは、経験豊富なサプライヤーや技術的な知見を持つ事業者が限られており、対応可能な少数の企業への依存度が高まっていました。

  • 現地サプライヤーへの偏重:現地市場のサプライヤーを優先する方針により、価格競争が十分に働かず、国際的な価格水準と比較する機会も限られていました。

  • 電子入札への参加障壁:サプライヤー側の厳格な社内規定によって電子オークションへの参加が制限され、調達プロセスが手作業中心となり、透明性も低下していました。

  • 支払条件による制約:一律のNET 60(60日後払い)という支払条件が、利益率の低い案件への優良サプライヤーの参加を妨げ、競争を制限していました。

  • 物流の不安定さ:頻繁な納品遅延やリードタイムのばらつきが受注対応に直接影響し、顧客満足度の低下にもつながっていました。

課題は、単に調達価格を引き下げることにとどまりませんでした。同社には、適切なサプライヤーの参加を促し、各社の異なる社内規定にも対応しながら、取引条件の魅力を高め、安定供給を強化できる調達モデルが必要でした。

アプローチ

YCPは、サプライヤーの開拓・育成、柔軟な入札方式、財務面でのインセンティブ、調達カテゴリーごとの戦略的管理を組み合わせた、多面的な調達戦略を採用しました。

グローバルなサプライヤー開拓による調達先の拡大

YCPは、グローバルな調達ネットワークと技術研修プログラムを活用し、サプライヤー基盤の拡大を図りました。専門性の高い技術領域における経験不足を解消するため、必要な能力を持つ新たなサプライヤーを特定するとともに、同社の技術要件に対応できるよう支援しました。

これにより、既存の少数のサプライヤーへの依存を軽減し、今後の調達活動に参加できるサプライヤーの選択肢を広げました。

ハイブリッド型入札方式の導入

すべてのサプライヤーが電子オークションに参加できるわけではないことを踏まえ、YCPは電子オークション、封印見積方式、交渉型入札を組み合わせた柔軟な調達モデルを導入しました。

このハイブリッド型の仕組みにより、サプライヤー各社の社内規定を理由に参加機会を制限することなく、競争環境を維持できるようになりました。また、多様なサプライヤーから提示される取引条件を、より実務的かつ公平に比較できる仕組みを整備しました。

柔軟な支払条件によるサプライヤーの参加促進

調達案件をサプライヤーにとってより魅力的なものにするため、YCPは段階的な支払条件を導入しました。これには、NET 30(30日後払い)の選択肢や、15日以内の支払いに対して2%の割引を適用する早期支払割引などが含まれます。

こうした取引条件の見直しにより、サプライヤーのキャッシュフローが改善し、利益率の低い案件を扱う事業者にとっても参加しやすい環境が整いました。これにより、価格交渉だけに依存せず、競争を促進できるようになりました。

戦略的なカテゴリー管理の実施

YCPは、設備投資(Capex)、輸送(Transportation)、保守・修理・運用資材(MRO)、スクラップ(Scrap)、梱包資材(Packaging)の5つの主要な調達カテゴリーに対し、それぞれに適した調達戦略を適用しました。

すべてのカテゴリーに同一の調達方式を採用するのではなく、各カテゴリーの特性、サプライヤーの確保状況、取引条件や市場環境に応じて、最適な調達手法を選択しました。

サプライヤー基盤の多様化による業務のレジリエンス強化

一連の調達戦略では、現地サプライヤーの活用と、専門性を持つ海外サプライヤーとの連携のバランスを重視しました。これにより、サプライヤーネットワークの多様化を進め、地域に偏った調達リスクを軽減するとともに、専門的な技術やケイパビリティを活用できる環境を整えました。

また、在庫状況の可視性向上とリードタイムの安定化にもつながり、サプライヤーや物流上の制約によって生じていた業務への影響の軽減を図りました。

効果

今回の戦略的調達改革により、定量的な財務効果を特定するとともに、サプライヤーの多様化、業務の拡張性、サプライチェーンの信頼性が向上しました。

直近の購入価格を基準として、約4,334万米ドルの対象調達額に対し、約194万米ドル、4.5%に相当するコスト削減効果を特定しました。

コスト削減に加え、これまでに1,400件の個別調達プロジェクトを実施し、調達モデルが大規模な業務にも対応できることを示しました。また、現地サプライヤーの活用と専門性を持つ海外サプライヤーとの連携を組み合わせることで、調達先を多様化し、地域的な供給リスクを軽減しました。

業務面では、在庫状況の可視性向上とリードタイムの安定化により、受注対応力が強化され、最終顧客の満足度も大きく向上しました。

主な成果

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総括

現地サプライヤーへの依存度が高く、調達プロセスにも制約があった従来のモデルを見直すことで、同社は、より幅広いサプライヤーが参加できる柔軟な調達環境を構築しました。

グローバルなサプライヤーの開拓、ハイブリッド型入札方式、支払条件の改善を組み合わせることで、サプライヤーの参加機会を拡大しました。また、戦略的なカテゴリー管理を通じて、設備投資、輸送、MRO、スクラップ、梱包資材の各分野に適した調達手法を導入しました。

今回の取り組みでは、対象調達額の4.5%に相当する約194万米ドルのコスト削減効果を特定するとともに、1,400件の個別調達プロジェクトを実施し、サプライヤー基盤と物流面のレジリエンスを強化しました。

その結果、より幅広いサプライヤーを活用できる競争力と拡張性の高い調達モデルが構築され、在庫状況の可視性向上、リードタイムの安定化、最終顧客の満足度向上につながりました。