ケーススタディ

分散したExcelレポートからサプライチェーンの一元的な可視化へ:米国インキメーカーの変革事例

2026年10月14日•by YCP Supply Chain
Industrials

米国の大手印刷インキおよび関連製品メーカーでは、製造拠点の一つで発生した火災により、サプライチェーン全体に大きな混乱が生じていました。事業の安定稼働に向けた復旧を進める中、経営層には、生産実績、在庫、出荷、受注残の状況をより明確に把握することが求められていました。

さらに、同社のレポーティング環境は、複数の業務システムから生成されるExcelファイルを中心に構成されており、課題を一層複雑にしていました。各チームが毎日、これらのレポートを手作業で集約し、メールで共有していたため、多大な工数が発生していました。一方、経営層はサプライチェーン全体の状況をリアルタイムに把握できる統合的な仕組みを持っていませんでした。

こうした状況を受け、同社はYCPに対し、分散したレポーティング環境を見直し、サプライチェーンのパフォーマンスを一元的かつ対話的に把握できるレポーティング基盤の構築を依頼しました。これにより、当面の業務上の課題への対応と長期的なレポーティングの自動化を見据えながら、経営層による迅速かつデータに基づく意思決定を支援することを目指しました。

課題

製造拠点での火災による混乱をきっかけに、同社が抱えていたサプライチェーンの可視性に関する課題が明らかになりました。個々の業務データは存在していたものの、複数のレポートやシステムに分散しており、サプライチェーン全体の状況を把握することが困難でした。

  • サプライチェーン全体を把握する仕組みの欠如:生産、在庫、出荷、受注残をそれぞれ別の業務レポートで管理しており、全体のパフォーマンスを一元的に把握できていませんでした。

  • 日次レポート作成の手作業による負担:複数のチームが毎日、Excelレポートの集約とメールでの共有に多くの時間を費やしていました。

  • 業務指標の分散管理:主要なサプライチェーン指標をまとめて確認できず、生産、在庫、出荷、受注残の関係性を把握することが困難でした。

  • パフォーマンスの推移を把握しにくい環境:従来のレポーティング環境では、期間ごとのパフォーマンスの傾向を把握しにくく、先を見据えた対応が難しい状況でした。

  • 需要に対する供給能力の検証不足:生産量や在庫水準が顧客需要を満たすのに十分かどうかを評価する仕組みがありませんでした。

製造拠点での混乱が生じた後、こうした課題への対応は一層重要になりました。同社には、サプライチェーン全体で何が起きているかを把握するだけでなく、パフォーマンスが時間の経過とともにどのように変化しているか、また供給量が需要を満たすのに十分かどうかを確認できる仕組みが必要でした。

アプローチ

迅速な対応が求められる中、YCPは、短期的な業務改善と高度な分析・レポーティングの自動化に向けた基盤整備を両立するため、Power BIダッシュボードを段階的に導入するアプローチを提案しました。

フェーズ1:ダッシュボードの迅速な導入

第1フェーズでは、3週間以内に業務状況を一元的に把握できる環境を構築することに重点を置きました。日次のExcelレポートに含まれる生産、在庫、出荷、受注残のデータを集約し、一つの対話型Power BIダッシュボードに統合しました。

これにより、日次・週次・月次・年次の各期間でパフォーマンスを分析できるようになり、手作業によるレポート作成に代わる、サプライチェーン業務を一元的に把握する仕組みを整備しました。

フェーズ2:高度なサプライチェーン分析

基本的なレポーティング基盤を構築した後、KPIの動的な追跡、トレンド分析、部門横断的な比較機能を追加し、ダッシュボードを高度化しました。

強化されたダッシュボードでは、生産実績、在庫の充足状況、出荷ペース、受注残の推移を関連づけて確認できるようにしました。これにより、業務指標間の関係性を把握し、変化の兆候やトレンドをより効果的に特定できるようになりました。

フェーズ3:データの自動化とSAP連携

次の段階では、レポーティングの自動化に対応できる、拡張性の高いシステム構成の整備に取り組みました。YCPは、SAPのレポーティングデータがすでにSnowflake上で管理されていることを確認し、SAPに直接接続するのではなく、Power BIダッシュボードをSnowflakeと連携させる方法を提案しました。

このアプローチにより、既存のデータ基盤との整合性を確保しながら、Power BIの日次データ更新の自動化と、より迅速なサプライチェーン関連の意思決定に向けた基盤を整えました。

移行期間中の業務継続性の確保

Snowflake側のデータ構造の整備が進められている間も、ダッシュボードは週次の手動データ更新を定期的に行うことで、継続して利用できる状態を維持しました。またYCPは、生産、在庫、出荷、受注残の間にある業務上の関係性を正確に反映するため、データモデルとDAXによる計算式を開発しました。

さらに、SAPデータをSnowflakeに連携し、Power BIのデータ更新を自動化するための取り組みを別途開始しました。これにより、ダッシュボードを暫定的なレポーティングツールから、継続的に活用できる仕組みへと発展させることを目指しました。

効果

段階的な変革により、サプライチェーンの可視性が短期間で向上するとともに、長期的な自動化に向けた基盤が整備されました。

同社は、複数のExcelレポートを手作業で集約する従来の方法から、生産、在庫、出荷、受注残を一元的に把握できる対話型Power BIダッシュボードへと移行しました。これにより、日次レポーティングに伴う作業負担が軽減され、経営層はサプライチェーン全体の状況をより包括的に把握できるようになりました。

また、日次・週次・月次・年次という複数の時間軸でパフォーマンスを追跡できるようになり、製造拠点での混乱後における出荷や受注残の推移を把握し、分析することが可能になりました。

特に重要な成果は、Snowflakeを活用したレポーティングの自動化に向けて、拡張性の高い基盤を整備したことです。これにより、サプライチェーンのレポーティングをさらに迅速かつ信頼性の高いものへと発展させ、データに基づく意思決定を強化するための土台が整いました。

主な成果

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成果

分散していた業務レポーティングを一つのPower BIダッシュボードに統合することで、同社はサプライチェーンが混乱する重要な局面において、全体の状況をより明確かつ包括的に把握できるようになりました。

この変革により、手作業によるレポート集約への依存が軽減され、生産、在庫、出荷、受注残の可視性が向上しました。また、複数の時間軸でパフォーマンスを追跡できるようになり、サプライチェーンの状況を多角的に分析する環境が整いました。

サプライチェーンの混乱に対する緊急対応として始まった取り組みは、拡張性の高い意思決定支援基盤へと発展しました。Snowflakeとの連携とデータ更新の自動化に向けた道筋が整ったことで、同社は手作業中心のレポーティングから、より迅速でデータに基づくサプライチェーン管理へと移行するための体制を整えま