ケーススタディ

現地サプライヤーへの依存から脱却:グローバルな発電・水処理事業者の設備停止時に備えた供給体制の強化

2026年10月15日•by YCP Supply Chain
Energy & Natural Resources

ガスタービン発電設備や海水淡水化施設の運転・保守(O&M)サービスを提供する世界的な大手事業者は、GCC(湾岸協力会議)諸国、東南アジア、中央・南アジアに事業を展開しています。同社は、設備の稼働可能な状態の維持を重視する長期契約のもと、複数の国にまたがる施設を運営しており、計画停止や緊急停止の際には外部サービス事業者への依存度が高い状況でした。そのため、信頼性の高いサプライヤー基盤の確保は、事業の継続性と収益を維持するうえで極めて重要でした。

一方、同社のサプライヤー管理は拠点や国ごとに分散しており、各国で異なる規制、HSE(安全衛生・環境)基準、サプライヤー市場への対応が課題となっていました。特に、設備停止時に必要となる人員の確保、非破壊検査(NDT)、機器レンタル、機械加工、工具コンテナなどの分野では、適切なサプライヤーを選定できないことが、調達業務だけでなく、設備の安定稼働にも大きな影響を及ぼす可能性がありました。

さらに、顧客や融資機関による審査・評価が厳格化する中、サプライヤーのHSE・品質管理体制や、選定プロセスの追跡可能性、適格性評価の判断根拠に対する要求も高まっていました。同社には、国をまたいで一貫した基準でサプライヤーを評価し、各市場で代替供給能力を確保できる、信頼性の高いサプライヤーネットワークが求められていました。

こうした課題を受け、同社はYCPに対し、6つの調達カテゴリーと10か国を対象に、4か月という限られた期間で、客観的な根拠に基づくサプライヤーの候補選定と適格性評価を実施するよう依頼しました。

課題

今回のサプライヤー適格性評価は、対象範囲が広く、設備の安定稼働に直結する重要な取り組みであったため、業務上のリスクと管理体制の両面に対応する必要がありました。

  • サプライヤー管理の分断:サプライヤーとの取引関係が国や拠点ごとに管理されており、設備停止時に必要となる重要なサービスについて、共通の適格性評価基準が整備されていませんでした。

  • 重要カテゴリーにおける供給体制の不足:人員確保、非破壊検査、機器レンタル、機械加工、工具コンテナなどの分野では、国境を越えて利用できる、適格性が確認された代替サプライヤーの確保が必要でした。

  • サプライヤーの信頼性に関する懸念:安定したサービス提供と、合意済みの技術・取引条件の遵守について、より確実な管理が求められていました。

  • 国ごとに異なる要件:対象となる10か国では、サプライヤー市場、規制、HSE基準がそれぞれ異なっており、一貫した適格性評価の仕組みを構築することが困難でした。

  • HSE・品質管理に対する要求の高まり:顧客や融資機関は、サプライヤーのHSE・品質管理体制に加え、適格性評価の判断過程を追跡できることを重視するようになっていました。

  • 不適切なサプライヤー選定に伴う業務リスク:設備の安定稼働に関わる重要な業務では、十分な審査を受けていないサプライヤーや、サービス品質が不十分なサプライヤーの起用が、設備の稼働停止や、それに伴う多額の損失につながる可能性がありました。

  • 限られた選定期間:決められた期間内に、客観的な根拠に基づき、監査にも対応できるサプライヤー候補リストを作成する必要があり、クライアントと連携して取り組む専任の調達チームが求められていました。

アプローチ

YCPは、サプライヤーの開拓、適格性評価、技術審査、クライアントによる検証、登録手続きを組み合わせた体系的なプロセスを構築しました。カテゴリーや国ごとの違いに対応しながら、将来の調達活動にも繰り返し活用できる評価の仕組みを整備しました。

関係者との要件調整と適格性評価基準の策定

関係者との協議を通じて、6つの調達カテゴリーと10か国を対象に、業務範囲、技術仕様、サプライヤーの適格性評価チェックリストを収集・整理しました。対象国は、UAE(アラブ首長国連邦)、サウジアラビア、オマーン、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、インドネシア、バングラデシュ、ウズベキスタンです。

評価基準には、クライアントが定めた要件と、一般事項(General)、品質(Quality)、安全衛生・環境(HSE)の3つの領域からなるチェックリストを採用し、各国の多様なサプライヤーに対して共通の審査基準を設けました。

国境を越えたサプライヤー候補の開拓

公開情報や既存のネットワークを活用した調査を実施し、調達カテゴリーと国ごとにサプライヤー候補のロングリストを作成しました。続いて、GCC諸国、東南アジア、中央・南アジアの約3,000社に情報提供依頼(RFI)を送付し、回答状況を確認しながら参加を促しました。

こうした幅広いアプローチにより、設備停止時の重要な業務要件に対応できるサプライヤーを選定するための候補群を大幅に拡大しました。

技術要件とHSE・品質基準に基づくサプライヤー審査

RFIに回答したサプライヤーに対し、一般事項、品質、HSEのチェックリストに基づいて技術面での協議を重ね、適格性を評価しました。回答内容を評価結果ごとに分類し、各項目を詳細に分析することで、サプライヤーが提供できるサービスの範囲や対応能力を確認しました。

また、クライアントの要請に応じて追加の面談を実施し、最終報告前に詳細な審査を行いました。

客観的な根拠に基づく候補リストの作成

チェックリストの評価結果、技術的な協議、サプライヤーからの回答内容をもとに、220社のサプライヤーを候補として選定しました。調達カテゴリー別・国別の評価結果をレポートにまとめ、クライアントが候補を検証し、最終選定を行うための判断材料を提供しました。

その後、クライアントと最終的な評価結果を協議し、登録前の最終確認として、必要に応じてサプライヤーとのオンライン会議を実施しました。

クライアントによる最終検証とサプライヤー登録

候補として選定されたサプライヤーについては、クライアントのエンジニアリング部門が各拠点固有の要件との適合性を最終的に検証しました。承認されたサプライヤーは、クライアントのサプライヤー管理システムに登録されました。

これにより、適格性が確認されたサプライヤーを、今後の購買依頼(PR)、発注(PO)、見積依頼(RFQ)、電子オークションに参加できる候補群として活用する体制が整いました。

効果

今回の取り組みにより、設備停止時に必要となる重要なサービスについて、サプライヤーの選択肢を大幅に拡大するとともに、適格性評価の標準化と管理体制の強化を実現しました。

3,000社を超えるサプライヤー候補から、6つの調達カテゴリーと10か国にわたる220社を選定しました。プロジェクトは開始から4か月以内に完了し、クライアントのシステムへのサプライヤー登録まで実施しました。

特に重要な成果は、GCC諸国、東南アジア、中央・南アジアに共通するHSE・品質評価の仕組みを構築したことです。これにより、今後、対象となる調達カテゴリーや国を拡大する際にも継続して活用できる、標準化された評価基盤が整いました。

主な成果

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総括

従来の国・拠点ごとに分散したサプライヤー管理から、国境を越えた体系的な適格性評価プロセスへと移行することで、設備停止時に必要となる重要なサービスについて、サプライヤー基盤の拡充と評価基準の統一を実現しました。

今回の取り組みでは、10か国・6つの調達カテゴリーにわたる3,000社以上の候補から220社を選定し、クライアントによる最終検証とシステムへの登録までを4か月以内に完了しました。

また、標準化されたHSE・品質評価の仕組みを構築したことで、今後のサプライヤー選定にも繰り返し活用できる管理体制が整いました。これにより、複数の国にまたがる事業運営を支える、より信頼性が高く、選定根拠を明確に示せるサプライヤーネットワークの構築につながりました。