資材コードの重複を可視化し、改善の優先順位を明確化:海洋掘削企業の資材マスター管理改革

超深海や厳しい海洋環境に対応する掘削船を運用する大手海洋掘削企業では、3隻の掘削船にまたがる資材マスターの管理が課題となっていました。システムの初期導入後も資材コードは増えつづけ、さらにMaximoへの移行によって、約3万件の非アクティブなコードが一度に追加されました。その結果、資材データが分散し、掘削船間での標準化が進まないまま、重複コードの作成が続くなど、資材マスターの管理が複雑化していました。また、運転資金が在庫として固定化されるリスクも高まっていました。
YCPは、独自のAIエンジン「BluMor」を活用し、3隻の掘削船にまたがる資材マスターの分析とデータクレンジングを実施しました。資材マスターの分析、AIによる重複検出、段階的なデータ整理のロードマップ策定を組み合わせることで、重複コードに伴う影響を定量化し、業務面・財務面での影響が大きい資材を特定するとともに、標準化された資材マスターへの段階的な移行に向けた道筋を明確にしました。
課題
資材コードの増加と管理上の課題:3隻すべての掘削船で資材マスターの登録件数が増加しており、四半期ごとの急増も確認されていました。既存コードの再利用が十分に行われず、同様の資材情報が繰り返し登録されていることが示唆されました。
掘削船間での標準化不足:3隻すべてで共通して使用されているアクティブコードはわずか3%であり、78%は1隻のみで使用されていました。その結果、掘削船ごとに資材データがほぼ独立して管理されていました。
重複コードの継続的な発生:システム移行後も重複コードの作成が続いており、アクティブな資材マスターから4万1,000件以上の重複コードが特定されました。
重複資材による運転資金の固定化:重複するアクティブコードの約25%には手持ち在庫が存在していました。また、重複コードに紐づく在庫総額1,935万米ドルのうち、71%に相当する1,370万米ドルが、出庫実績のない滞留資材に関連していました。
データ整理の優先順位付けの欠如:重複コードの整理をどのような順序で進めるべきか、また短期的に対応すべきものと中長期的に改善すべきものを区別するための方法が整備されていませんでした。
使用中の重複コードによる業務への影響:重複コードの89%には出庫履歴がなかった一方、残る11%は実際の業務に影響を及ぼしていました。また、重複コードの51%が出庫頻度の高い、または中程度の区分に該当し、出庫全体の16%が重複コードを持つ資材に関連していました。
アプローチ
3隻の掘削船にまたがる資材マスターの分析
YCPは、独自のAIエンジン「BluMor」を導入し、3隻すべての掘削船を対象に資材マスターのデータクレンジングと分析を実施しました。約37万5,000件の取引データと約19万4,000件のアクティブな資材コードを分析し、約4万1,000件の重複コードを特定しました。これにより、データに基づいて重複コードの整理を進めるための基礎情報を整備しました。
AIを活用した重複コードの検出
BluMorでは、自然言語処理(NLP)によるデータの正規化、TF-IDFによるベクトル化、K-Meansクラスタリングを活用し、重複の可能性がある資材を類似性や判定の確信度に応じてグループ化しました。メーカー情報、メーカー部品番号(MPN)、資材の説明文などを分析することで、表記や登録内容が異なる場合でも、重複している可能性のある資材を特定できるようにしました。
在庫・調達への財務的影響の分析
重複コードを持つ資材について、在庫および調達金額との関連性を分析しました。その結果、重複コードに紐づく在庫総額は1,935万米ドルにのぼり、このうち1,370万米ドルが出庫実績のない滞留資材に関連していることが明らかになりました。また、過去2年間の調達実績を分析した結果、重複コードを持つ資材に関連する調達額は704万米ドルに達していました。
段階的な重複コード整理の優先順位付け
すべての重複コードを一度に整理するのではなく、短期・中期・長期の3段階に分けて対応する方針を策定しました。優先順位の設定では、資材の出庫状況や在庫への影響を考慮し、業務への影響が特に大きい資材から重点的に対応できるようにしました。
クライアントによる検証と改善ロードマップの策定
クライアントとの検証ワークショップを実施し、掘削船ごとの資材コードの増減傾向、掘削船間でのコードの共通性、AIによる重複判定の確信度、段階的な改善ロードマップを提示しました。その結果、短期396件、中期3,188件、長期28,977件の資材コードを整理対象として設定し、段階的な改善ロードマップを策定しました。
効果
今回の取り組みにより、3隻の掘削船にまたがる資材マスターの品質を検証し、重複資材がもたらす財務的な影響を定量的に把握するとともに、実行可能な改善の優先順位を明確にできました。約37万5,000件の資材取引を分析し、アクティブな資材マスターを検証した結果、19万4,873件のユニークな資材コードを確認しました。
また、約4万1,212件の重複コードを特定し、アクティブな資材マスターの約16.7%に重複が存在することを明らかにしました。さらに、重複コードと実際の業務活動、在庫、調達金額を関連づけて分析することで、優先的に整理すべき資材と、中長期的に対応すべき資材を区別できるようになりました。段階的な検証を経ることで、アクティブな資材マスターを約11.4%削減できる可能性も特定しました。
主な成果

総括
今回の取り組みにより、同社は従来の分散した資材コード管理を見直し、客観的なデータに基づいて重複コードを段階的に整理するための計画を策定しました。AIを活用した重複検出と、在庫・調達への影響分析を組み合わせることで、重複資材が業務運営や運転資金に大きな影響を及ぼしている領域を明確にしました。
また、短期・中期・長期の3段階に分けた改善ロードマップと、クライアントによる検証を経た優先順位を整備したことで、重複コードによる影響の軽減、掘削船間での資材データの標準化、資材マスターの継続的な管理体制の強化に向けた道筋が明確になりました。
出典:YCP Supply Chain ケーススタディ「Material Master Cleanup & Deduplication」